さて、去年の夏、被災した福島県の少年野球チームの子どもたちを小諸に招いて、
交流試合を行った東雲少年野球部。
あれから1年。
交流試合でつないだ絆は、新たな物語を生んでいました。
東雲少年野球部は、東雲区に住む子どもたちで作る少年野球チーム。
現在、小学1年生から6年生まで、14人が所属し、週に2回集まって練習をしています。
去年の夏には、東日本大震災で被災し、以降野球が出来なくなっている福島県の少年野球チーム、
本中イーグルスの子どもたちを小諸に招待。
青空の下、交流試合を行いました。
本中イーグルスが活動の拠点にしていた富岡町(とみおかまち)は、
原発事故の影響で今もなお避難区域に指定されており、チームのメンバーたちは皆
県内外へと避難しています。
そんな子どもたちに、青空の下で再び野球をしてもらいたいとの想いから、
東雲少年野球部の竹内広宣(たけうち・ひろのり)監督が中心となって企画したこの交流試合。
小諸を訪れた子どもたちは、久々に顔を合わせるメンバーたちとのプレーに喜びを感じた様子で、
皆のびのびと身体を動かしていました。
あれから1年、子どもたちは交流試合でつないだ絆を胸に、日々練習に励んでいます。
通常の練習日となったこの日、一通り練習が終わったところで、竹内監督が子どもたちを集めました。
監督の手には、段ボール箱が持たれています。
箱の中身は、ユニフォームやスパイクなど、本中イーグルスで使われていた野球用品です。
本中イーグルスのメンバーは未だに避難生活を送っており、皆で集まって練習することは困難。
そのため、再びチームを結成することを断念していました。
使っていた野球用品を去年の夏に交流した東雲少年野球部の子どもたちに使って欲しいと、
状態の良いものを選んで送ってくれたのです。
去年の夏に繋いだ絆が、思いがけない形で子どもたちに返ってきました。
段ボール箱の中には、ユニフォームやスパイクとともに手紙も添えられていました。
文面には、去年の夏の楽しかった想い出のこと、また、当時小諸を訪れた本中イーグルスの子どもたちが
中学生になり、震災に負けずそれぞれの道を歩み始めたことなどが書かれています。
保護者が読み上げる手紙の内容に、真剣に耳を傾ける子どもたち。
その表情からは、野球が出来る自分たちの環境に感謝しなくてはいけない、
そんな想いが伝わってくるようでした。
気持ちのこもった野球用品を受け取った子どもたち、一人一人それぞれに感じるものがあったようです。
東北の地では、野球をしたくてもできない人たちが沢山いる。
自分たちはその人たちの分まで、これからも大好きな野球を続けていきたいと語る子どもたち。
こうした現状を身を持って感じたことで、日ごろ何気なく使っていたスパイク、ユニフォーム、
グローブ、バット、そして何よりも、自分たちを支えてくれている多くの人たちや
野球ができる環境に感謝するという気持ちを改めて持ってもらいたいと、竹内監督は話します。
遠い福島の地からの応援を受けて、東雲少年野球部の子どもたちは
今日も元気に白球を追い掛けています。