文豪島崎藤村の生誕150周年を記念し、

藤村作品を朗読と音楽で楽しむ舞台

「藤村文学と出会う朗読と音楽のひととき」が、

11日(日)島崎藤村ゆかりの宿、

中棚荘別邸「はりこし亭」で開かれました。

 

この舞台は、上田市の複合文化施設

「犀の角」を運営する

「シアター&アーツうえだ」と、

茨城県土浦市を拠点とする劇団「百景舎」による

連携企画として行われたものです。

 

両者は、

3年かけて、文豪島崎藤村の木曽路を舞台にした長編小説

「夜明け前」を取り上げるプロジェクトを去年発足。

「夜明け前第一部」を上演した去年に続き、

2年目となることしは、

藤村文学の言葉と出会いなおしてもらいたいと、

藤村の作品を集めた

「朗読と音楽による上演企画」を立ち上げました。

 

県内4か所を会場に行われてきたことしの舞台。

最終回は藤村が足掛け7年暮らし、

詩人から小説家へ転身した小諸の地での上演となり、

藤村ゆかりの宿、中棚荘別邸「はりこし亭」で行われました。

 

バイオリンとチェロの演奏をバックに

女優二人が、藤村が小諸で書いた短編小説や

「千曲川のスケッチ」から

「十三日の祇園」などを披露し、

藤村が紡いだ小諸の情景などが朗読でよみがえりました。

更に、小説「破戒」の一場面も朗読で披露。

緊張感高まる表現力に、

訪れた50人の観客らは引き込まれていました。

 

朗読舞台に続いては、

小諸市の山下教育長と、中棚荘の社長、富岡直希さんによる

アフタートークも行われました。

 

中棚荘は、藤村が、小諸に滞在していた7年間、

足しげく通ったゆかりの場所でもります。

この宿の六代目として切り盛りしている富岡さんは、

朗読でよみがえった藤村作品についてこのように話しました。

 

「こういった藤村が描いた文章というものが歌と詩に乗せてということで、

自分自身で感じるもの以上の躍動感や良い意味で緊張感を持って表現されていて、

私は正直こういった会に縁がなかったのですが、

私たちに身近な藤村を表現していただいて、

私自身も藤村を改めて感じられる会になったと思います。」

 

また、大学の卒論のテーマが「エッセイスト島崎藤村」だったという

山下教育長はー

「藤村の生きた人生というのを改めて感慨深く考えさせられました。

と同時に、私の論文では、

破戒は本当に被差別部落のことを中心に打ち出したものだろうか

と結末に書いてございました。

もっと明治期の様々な差別、不条理に対して物を申したのではないかと。

しかし今日の最後の破戒をお聞きして改めてまた

もう一度考え直そう、藤村の強い思いというものを

考え直そうと思っております。」

 

この日はアフタートークに続いて、

小諸義塾を開いた木村熊二の書斎として使われていた、

中棚荘敷地内にある「水明楼」と、

木村熊二が掘り当てた井戸のライトアップも行われました。

訪れた人たちは、ライトアップされた水明楼を見ながら

藤村のいた時代に思いをはせている様子でした。

 

演出家 志賀亮史さん

「今回の旅で、僕ら自身が藤村と出会うというタイトルなんですけど、

本当に出会いなおしている感じで、

最初の原点である小説家になった土地で何を考えていたのか

どんなことを感じていたのかというのを

ツアーの最後にやれたというのは

すごく意味のあることだったなと思います。

来年夜明け前の第2部をいよいよ作っていく。

今回、今年やったことやいろんな人と出会ったことをもとに

それがつまった作品になればと思っていますので、

今藤村がどういう意味を持つのかというのが

感じられるような作品になったらと思っていますので

ぜひ見に来ていただけたらと思います。」