現在、タレントや実業家として活動する武藤千春さんが、
小諸と東京の二拠点生活をしながら、
この春から農業を始めています。
小諸の農産物を届ける、
農ライフブランドも立ち上げた武藤さん。
武藤さんが考える、小諸での生活について、
また農業や小諸の農産物の魅力について、取材しました。
市内与良の320坪におよぶ畑で、農作業にいそしむ女性。
タレントで実業家の武藤千春さんです。
2011年、16歳の時に芸能界へ、
以降、アーティストとして活動していました。
その後2015年には、自身がデザイナーを手掛ける
アパレルブランド「BLIXZY(ブライジー)」を立ち上げ、
実業家に転身。
アパレル業の傍ら、ラジオパーソナリティーを務めるなど
多忙な毎日を送ってきました。
そんな武藤さんが小諸と東京での2拠点生活を始めたのは、
おととし、2019年の冬のこと。
祖母が小諸市への移住を決めたことをきっかけに、
母親と共に週の半分以上は小諸で過ごすようになりました。
「私の祖母が2年位前から長野の小諸で、
田舎暮らしをしながら、趣味のスケッチをしたり写真を撮ったりしながらという
のんびりした暮らしがしたいと言って、小諸で家探しをしていて、
1人で内見行くのも心配だったので、私や母が付き添って、
何度か小諸と東京を行き来しながら、家を探していたんですけど、
その時に、想像以上に長野近いなとか田舎暮らしって、
すごく老後、大人になってからとか、
何十年も先のことだとか思っていたんですが、
この距離でこのアクセスの良さだったら今の仕事や好きなことを続けながら、
良いバランスで田舎暮らしを取り入れて、
自分の好きなラインを見つけられるのかなという可能性を感じて、
私も一緒に小諸に拠点を作ろうと思って小諸に住み始めました。」
小諸で生活を始めて半年。新型コロナ感染症が拡大。
そんな中でことしの春から新たに始めたのが農業です。
佐久市の畑でトマトやナス、キュウリなど、
15種類ほどの野菜を栽培。
更に、小諸市与良にも先月新たに畑を借り、
オクラや玉ねぎなどを栽培しています。
畑を始めたきっかけについて武藤さんはー
「きっかけは、佐久市の方に親戚が住んでいて、
そこで農業をしている親戚がいるんですけれども、
その人の話を聞いているうちに、
やっぱり高齢化が進んで次世代の担い手がいないとか、
年も上がって、畑を管理できないから耕作放棄地が増えていって。
そういう課題を聞いたときに、何か自分の世代だからこそとか、
私だからこそできることがあるのではないかと感じて。
でもまず、課題解決とか言っているけど、やったこともないと、
何が困りごとでとか、見えない部分、
気づけない部分がたくさんあるなと感じて、
それでことしの3月から自分でも
小さい規模で畑をやってみようと思い、畑を始めました。」
「(始めたときとかどうでしたか?)何もわからなかったです。
本当に周りの人に聞いたりとか、
YOUTUBEやネットで調べたりとか、
こんな感じかなと思ってやってみて、もちろん失敗もたくさんしますし、
こんな風になると思ってなかったみたいなこともたくさんあるんですけど、
逆に言うと、これまで都市部でずっと暮らしてきて、
この26年間、自分がやりたいと思った方向に
進まないことってあんまりないじゃないですか、
例えばお仕事でも人と話して、なんかうまくいかないなと思っても、
その原因を突き詰めて改善することが出来ると思うんですが、
自然はそうもいかない。ちょっと雨が少ないからと思っても、
雨は降ってくれないし、ここまで思い通りにならないこと逆に面白くて、
改めて自然のすごさというか、
食べ物を食べられるって、とても偉大なことだなと。
この恵みに感謝というけど、本当にその通りだなと、
この年齢になってやっと感じました。」
小諸での暮らし、生活にも変化がー。
「めちゃくちゃ変わりましたね。
幼少期、友達と遊ぶ時も公園や自然の中で遊ぶという経験がなく、
商業施設の中で遊ぶとか、小学生の時でも竹下通りや渋谷に行くとか、
ゲーセン、カラオケ、ファーストフード行って、
みんなとおしゃべりしてみたいな遊び方だったんですよね。
でもこっちに来て、お子さんとかも走り回っているのを見たりとか、
この年齢になっても走り回ったりとか、
虫や野菜と格闘したり、こういう体験ってなかったなとか
すごくもったいなさを感じつつも、
知れて良かったというのがすごくあります。
私の中では、農業をしているというより、
農ライフをしているという感覚の方が強いんですが、
農に触れると、食のありがたみや自然の中で暮らせているありがたみ。
毎日ご飯を食べられることのすごさ。
そういうことを気づけたのが本当に農に触れて良かった1番良かったことです。
農を通じて、すごく小諸で色んな方に出会って、
話を聞かせてもらっていて、こんな生き方もあるんだとか、
十人十色の中にも生活の中心には農があって、
そういう方との出会いの中で、何か他人の物差しではなくて、
自分の物差しで生きて良いんだとか。
すごく色んな話を聞いて、そこに豊かさを感じて、
私も本当にやりたいことをやったり、
やりたくないことはやらなくて良いのかもとか。
そういう心の部分も軽くなったような気がするので、
そこが魅力かなと思います。」
どんどん農作業にのめりこんでいった武藤さん。
自身で作った野菜を始め、
小諸で知り合った人のおいしい野菜を
多くの人に知ってもらいたいと、
インスタグラムなどを通じて販売も始めました。
「例えばトマト1本の木からトマトがどれくらいなるとか知らないで始めたので、
いざ野菜が出来てみると、こんなにできちゃうんだとか、
逆にこれだけしか出来ないんだってことがあって、
そうこうしていると、自分の家では食べきれないくらいの野菜ができ、
近所におすそ分けしても余るとなった時に、
じゃあ、これをもったいないからネットで販売してみて、
実際に届けてみようというところから、
販売を始めたのが、今年の半ばくらいで、
そんなことをしていると、農業を始めて2、3か月なのに、
もう野菜を売っているのとか、
個人でこういう風に売れるんだという風に周りの人から言われて、
実はうちに規格外の野菜があって、なかなか市場に卸せないけど、
形は変かもしれないけど、
味は変わらず美味しい野菜たちがすごく沢山あるんだよねって教えてもらって、
じゃあそれも売りましょうよとか。
元々ビジョンがあって、こういう風に野菜を売りたいというよりは、
色んな人との会話の中で、やってみようとなったのが、今の形ですね。
やっぱり、私と同世代で都市部にくらしている人って、
野菜をだれか人から買うっていう体験をしたことがなかったりとか、
なんか旬というものがあるんだとか、
都市部の人は、スーパーで並んで買うのが日常だし、
そういう意味では、私から野菜を買うとか、
こういう場所で作られている野菜を買うとか
そこまで知ることは同世代の人はなかなか知ることがなくて、
なので、そこは新しい体験だったと言ってもらえました。」
小諸の農の魅力をもっと発信したい。
そんな思いからこの秋には農ライフブランド
「ASAMAYA」を立ち上げた武藤さん。
ここ最近広がってきた小諸の人たちとのつながりの中で、
先月には、荒町のコモドの一角で、2日間に渡り、
自身のアパレルブランドとあわせて、
小諸の農家が作った野菜の販売も実現。
大きな反響を呼び、手ごたえも感じたと言います。
「色んな農家の方と話をするようになっていくうちに、
それぞれ色んな悩み事、困りごとがあって、
それを知っていくうちに、自分で作った野菜を販売する農業のやり方もありますが、
そうじゃない農との携わり方がきっといっぱいあるなと思っていて、
なんとなく、固定概念で、畑をやって、発信するとなると、
自分がゼロから届けるところまでするというイメージがありますけど。
地域の野菜をまとめて売る八百屋さんというか。
そういうのも1つの農業というか、
農ライフのあり方というかじゃないかなと感じていて、
それをチャレンジでしてみようと思っています。
テスト販売という感じで、
ASAMAYAでじぶんのやりたいように
色んな面白い人が作っている野菜を売ってみたらどうなるのだろうと思って、
売ってみたんですが、それがすぐ売り切れて。
野菜を届けるといっても、おいしい野菜を届けるのは、当たり前なんですが、
そこから先、私が小諸に来て感じたことは、
農ライフをしている人の面白い部分だったり、
知ってた?小諸にこういう人いるんだよとか、
そういうのを野菜を通じて届けられるこだわりももちろんだけど、
その人のバックグラウンドやその人が
プライベートの時間どんなことをしているかとか、
すごく身近なものに感じる。
実際に自分が野菜を販売して、今までこういうことをしてきて、
こういう千春ちゃんから野菜を買うというのを楽しんでもらえたというのが、
自分の中の経験として、あったので、それをもっと広げられないかなと。
やっていって、実際にPOPUP来てくれた人にも
この野菜はこういう人が育ててねとか。
そんな話をたくさんして、それで、面白いわ。食べるわ。とか。
その会話が生まれたのがすごく楽しかったです。」
武藤さんは今後、自身の農ライフブランド
「ASAMAYA」を通して、
小諸の農の魅力をもっと多くの人に
発信していきたいとしています。
「やっぱり小諸に住んで感じた魅力がたくさんあって、
その魅力やみんなに届けられる資源とかを見つけて、
今ここにあるものをどうやって組み合わせたら面白いかなとか。
色んな人と出会って、この人とどういう風にしたら、
面白いことできるかなとか。1つ1つのものとか、人とか。
こととかの出会いを大切にしながら、
その時にやりたいと思ったものを色々、
この小諸の街でやっていきたいと思っています。」
小諸と東京、二拠点での生活をつづけながらも
小諸の農業の魅力の発信に力を注ぐ武藤さん。
若き女性実業家の挑戦は続きます。