小諸の夏といえば、神輿ですよね。

しかしこの夏は、

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、

健速神社祇園祭と天王社祇園祭典の

神輿巡行が2年連続で中止となりました。

そんな中、本来神輿巡行が行われる予定だった

11日(日)には、両方の神社で神事のみが行われました。

きょうは健速神社祇園祭神事の1日を特集でお伝えします。

 

健速神社の祇園祭は、五穀豊穣・無病息災を願い、

毎年、7月13日に一番近い日曜日に行われている、

伝統の祭典です。

今からおよそ450年前、

室町時代から欠かさずに続けられてきた祇園祭礼は、

平成27年6月、

小諸市の重要無形文化財にも指定されています。

 

祭りでは、神社の氏子である、田町・六供・本町に住む

36人の男性が、

六角総けやき作り、担ぎ棒を入れると、

重さ700キロを超える神輿を

終日に渡り担いで区内や市街地を練り歩きます。

その勇壮さは見る人を魅了してやみません。

 

ことしは、去年に引き続き、

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、

本来祭りが行われる予定だった11日(日)に、

神事を中心に行われることになりました。

 

担ぎ手を務める神輿係の総代、副総代は

法被姿で参加となりましたが、

その他の神輿係たちは、Tシャツでの参加に。

 

事前に検温も行って万全の体調状態で、

神事に臨みました。

 

疫病退散の神、スサノオノミコトを祭る健速神社。

神事では神主が祝詞を上げ、

新型コロナウイルスなどの疫病の退散を祈願し、

お祓いを行うと、

出席した関係者らが順番に玉ぐしを捧げました。

 

密を避けるため、公に周知はしていませんでしたが、

境内には地域の氏子たちが集まり、

神事を見守っていました。

 

ことしの祇園祭では、神輿の巡行は中止となりましたが、

神様を移した神輿を移動しての展示も

行われることになりました。

 

通常、縦の棒と横の棒を縛って担がれる神輿ですが、

今回は仮宮となるほんまち町屋館まで運ぶために、

縦の棒のみ縛ってある状態に。

 

担ぎ手たちは、拝殿からゆっくり神輿を出すと、

ご神木である境内のけやきの木のまわりを

通常の例大祭同様3周しました。

 

続いて鳥居をくぐると石段へ。

通常はこの石段を勢いよく下る神輿ですが、

ことしは横の棒がないためバランスを崩さないよう、

慎重に下っていきます。

 

無事石段を下り終えると、

担ぎ手たちは、総々代の扇子の先導で

わずかな道中をかみしめるように前に進んで行きました。

 

臼田さん

「最初扇子なしで行く予定だったんですが、

どうしても神輿をコントロールするのに、

声を出すよりはそういうつもりではなかったですけど、

扇子でやると神輿は、神輿係はそれにそってしみついているものなので、

右によるとか回るとかゆっくりとか

それをすべて扇子の動きでやるというのは

今日やってみてこういう状況下だからこそ

理にかなってできたのかなという形ですね。

みんな生き生きとした表情で、

みんなどこまで我慢していいのかとかわからない中で当日迎えて、

やっぱりみんな久しぶりに集まって全然集まれない中で、

みんなの表情を見ていたらこのお祭りは

伝統の力というのはすごいなと思いましたね。

みんなこの神輿を大好きでやっているというのはすごい伝わってきましたね。」

 

仮宮では、通常「渡し台神事」で使う渡し台が置かれ、

総々代の扇子の先導のもと、担ぎ手たちが

神輿を渡し、台へと安置しました。

神輿の巡行は叶いませんでしたが、

わずかな距離でも神輿を運ぶことができたことし。

一歩前進したことで

担ぎ手たちは祭りへの思いも一層強くしたようです。

 

仮宮となったほんまち町屋館に置かれた神輿。

神輿が神社から出る様子を見守っていた地域の人たちは、

神輿に子どもを乗せて、

健やかな成長を祈っていました。

 

五十嵐さん

「本当にありがたいですよね。

この神輿が文化の中心になっているんだなというのが本当に改めて感じました。

僕が小諸に住んでいるというのは

この神輿と一緒にあるというのが僕の思いですね。

すべてというと大げさですけど、

僕のかなり大きな部分を占めています。

来年こそはということで、去年より今年のほうが

神事としても少し前に進むことができたもんですから、

これをもっと前に進める、せっかく先輩方から引き継いできたもの、

今日来ていただいた地域の皆さんの思いも

改めて感じることができましたので、

来年こそは必ず、精一杯、

恥ずかしくないように神輿を上げたいと思っています。」

 

山本さん

「担げたというのは去年に比べたら

前に進めたのかなとは思いますよね。

統率、肩合わせとかそういう場面までいけていないので、

当然Tシャツ姿で担ぐという

イレギュラーな形にはなってしまいましたけど、

今年あって来年につながると思います。

内に秘める神輿係の思いというのはひしひしと伝わってきた感じですね。

なくてはならないものといいますか、

担げて当たり前のものがここ数年できなかったので、

ふがいないというか来年ですね。

来年こそはぜひ地域のみなさんに

くまなく見せられるお祭りにしたいですね。」

 

令和元年、おととしの祭りで初めて担ぎ手の総代表を務めた

総々代の臼田和弘さんは、神輿に携わって19年目。

令和最初の祭りでの神輿練りを最後に、

この2年間は巡行ができないままとなりました。

しかし、人生の半分近く祭りに携わってきた臼田さんにとって

健速神輿にかける思いは変わることはありません。

強い思いを来年に託します。

 

臼田さん

「事前周知が全くない中で神社関係者だけで

今日は執り行うという中でそれでも、

一目だけでも見に来ようという人もいらっしゃいましたし、

うちらも関係者だけでやるという思いで

きょうやった中で少し来てくれただけでも

本当に表情が担いでいる最中、

ものすごい幸せそうな表情だったので

本当に来年こそはたくさんの人に来てもらって

その中で全員が100%の声、力を出して、

堂々と今年以上の良い表情でやってもらいたいなと思います。

長くやらせてもらったというのは本当に幸せなことで

自分が担ぎ始めたときもいろんな先輩たちが自分たちに残してくれた財産、

それはやっぱり今度はうちらが次に伝統を引き継いでいかなければいけないっていう

責任感でやっぱりみんな長くやってきている人たちは

そういう使命を背負ってやっているので、

この二年間できなかったというのはやっぱりもっともっと伝えたいことがあったですけど、

少し今日はそれでも少しはみんなが全員じゃなかったですけど

少しは伝えることができるかなということであります。

本当に誰のせいではないですけども本当に悔しい思いの中で、

でも伝統はきちんと引き継いでちゃんとしたに伝えていかなければならないという

このお神輿を来年以降、やるメンバーがしっかりと

それを引き継いでやっていかなければいけないと思っているので

ぜひ頑張ってやってもらいたいと思います。」

 

戦後の歴史の中では初めてとなった

2年連続の神輿巡行の中止。

無念の思いを抱きながら来年へと思いを新たにする

担ぎ手たち。

思いを共にする同志が集まったことで、

また一つ、絆が深まり、

新たな伝統の一ページが刻まれました。

ことしそれぞれの胸に抱かれた思いは

来年へと必ず継承されるはずです。

 

氏子総代長

「伝統文化の継承ということに関して

二年連続で神事だけで終わるということに対しては

今までやってきたものが継承できなくなるんじゃないか

というそういう恐れがあるんですよね。

ですから少しでもことしは前に進めて伝統をある程度継承して

その次の年に完全なときに、

やってもよいとなったときに改めて

歴史の一ページを始めていくのに

どうしてもやらなければいけなかったと私は理解して今回の判断に至りました。

いつの時代も神輿を担ぐ人って熱気があるんだろうな。と

いくら制限をかけても体から出てくる熱気が

そういう声に「よいよい」だとか「よいと」だとか

体中から発して出てくる声なんだろうなというふうに

私は改めて神輿の持っている力を改めて知りましたけれども。

やっぱり一番大事なので担ぎ手が次の年から

どういうモチベーションで持っていけるかということが大事なので

そこの部分を少しでもくんであげたかったというのが

総代長としての個人的な意見としてもそんなような気持ちでしたね。

顔見て、ここまでやってくれてありがとう、神輿見られてありがとう

という方が多くて子供さんを乗せて記念撮影をしている姿、

おやごさんからありがとうと言ってもらえたことに関しては

本当にこれだけのことしかできなかったけれども

神輿を待っていてくれたんだなと改めて力強く思いましたし、

また来年はみんなで力をあわせてもっとより良い、

二年間こういうことになりましたけれども新しいものを作っていきたいな、

またみなさんと一緒に作り上げていきたいないうことを強く持ちました。

今まで通りのことをやるというのはすごく難しいことなんですけど、

私たちはこのコロナ禍において二年連続伝統文化継承ということについて、

改めて考えさせられました。

やっぱり休んだことは大変だったんだけれども、

これで新たな道に踏み出す第一歩ができたのかなと思いますので、

もちろん今までやってきたことにプラスとして

そのうえで何が求められているのだろうか、

何が必要なんだろうかということを

改めて担ぎ手のみなさんと総代会と協力しながら

新しいお祭りをしていきたいなと思います。

もちろん市民の皆様に愛されていただけるような

お祭りにぜひしていきたいなと今はそう考えています。」

 

小諸に夏の訪れを告げる、健速神社祇園祭。

地域の氏子たち、そして祭りに携わる

すべての人たちの思いを乗せて。

400年続いてきた伝統はまた来年へとつながっていきます。