小諸市教育委員会では、新年度から、小諸教育の復興を目指して、

子どもたちが遊びながら運動習慣や基礎体力を培う「運動遊び事業」を導入します。

 

これに伴い、2日(土)には、この「運動遊び」事業を体系化した「運動プログラム」の提唱者で、

松本短期大学教授の栁澤秋孝さんらを招き、「今、子どもの教育に必要なもの」と題した、

子育て・幼児教育講演会が、文化センターホールで開かれました。

この日は、市内の保育園に勤務する保育士や、幼稚園、学校関係者を始め、子どもを持つ親など、

およそ150人が訪れました。

「運動遊び事業」は、子どもたちを取り巻く環境が様変わりし、集中力がない子どもや体力・学力の低下が

問題となっている子どもが増えている中、幼児期から、運動習慣や基礎体力を培うことで、

子どもたちの運動能力の向上に繋げて行こうと、小諸市教育委員会が、

「小諸教育復興の第一歩」と位置づけて、新年度から取り組むものです。

講師を務めた松本短期大学教授の栁澤秋孝さんは、30年以上に渡って、

幼児運動学を専門に研究を行い、これまで1万5000人以上の幼児期の子どもたちに、

運動遊びを直接指導してきた第一人者です。

15年前からは、大脳活動、特に前頭葉の研究を進め、運動が子どもの精神的発育に

大きな影響を及ぼすとの仮設から、保育現場における運動保育援助の効果を、調査・研究しており、

生きる力を育むための「柳沢運動プログラム」を提唱し、各地で実践。

効果を生み出してきました。

栁澤さんは、講演の中で、社会環境の変化で、1975年以降、子どもたちが外で遊ぶことがなくなり、

体を動かすことが極端に少なくなってきたと指摘。

運動をしないと、骨や筋肉、脳が動かなくなり、体力の低下だけでなく、コミュニケーション力の低下を招き、

他人の気持ちが理解できなくなってしまうなどと説明しました。

更に栁澤さんは、脳の発達の遅れは、校内暴力や不登校、

家庭内崩壊を引き起こす原因にもなるとし、どうすれば今の環境の中で、

子どもたちが健やかに育つようになるか、私たち大人が考えなければならない課題だと話しました。

また、これまで運動プログラムを実践してきた中で感情をコントロールする脳の前頭葉機能の

発達に関する研究を行った結果などから、幼児期から運動に取り組むことで、判断力や抑制力に繫がり、

感情をうまくコントロールできるようになると、その効果について説明しました。

その上で栁澤さんは、

「運動あそびによって運動ができるようになったり、体が丈夫になるというのは過程にすぎない。

プログラムの最終的な目的は、『心を育てる、人間性を育てること』だ。」と話しました。

この日は、栁澤さんの息子で、現在、体育科学博士として、

運動によって向上する脳科学について研究する傍ら、NPO法人運動保育士会の理事長として、

各地で運動プログラムの実践を行っている、栁澤弘樹さんも演台に立ち、

「最新脳科学からの運動支援効果」について講演しました。

 講演の最後に挨拶に立った、栁田市長は、

「教育と文化は未来への投資、未来を担う子どもたちは小諸市の宝だ。」と話し、

小諸の教育を復興させていくためには、幼児期の取り組みを最優先させていかなくてはならない。

その第一歩が「運動遊び事業」だとして、「全国に誇れる事業にしていきたい。」と

新事業にかける思いを述べていました。

 

小諸市が新年度から取り組む「運動あそび事業」。

栁澤さんの研究では、運動あそびを行ってきた子と、運動あそびを行ってこなかった子とでは、

前頭葉の発達に2年の開きがあることがわかっており、それによって、様々な成長の妨げに

繋がっていることも明らかになってきているようです。

また、全国の学力、体力テストなどでは、体力が高い地域ほど学力が高い結果も出ており、

栁澤さんは、運動で培った達成感が、勉強を頑張る力にもつながっているとも話していました。

小諸市では、教育委員会内に、プロジェクトチームを立ち上げ、新年度から、市内の保育園、

幼稚園でこの事業を実践できるよう準備を進めています。