さて今年は、再生医療への応用が期待されるips細胞を作成した

京都大学の山中伸弥教授がノーベル賞を受賞し、話題になりましたね。

 そんな中、市内六供にあるさくら動物病院では今年8月から動物の再生医療を始めています。

 

 さくら動物病院では、再生医療の導入に向けて昨年12月から学習会や研修を実施し、

今年8月から治療に取り入れています。

 動物の再生医療は現在、国内のおよそ140の動物病院で行われています。

 県内ではさくら動物病院が初めて。甲信越では3番目となります。

 再生医療とは、動物自身の細胞を材料として病気や体の一部を修復し、治療していくものです。

 大きな流れとして、病気を患った動物から治療に必要な細胞を採取し、

培養して増やしてから体内に戻す過程をたどります。

動物自身の細胞を使うため、従来の薬や手術などに比べて、

副作用や拒絶反応が出にくいとされています。

 再生医療には「免疫細胞療法」と「脂肪幹細胞療法」の2つの方法があります。

 そのうち免疫細胞療法は、主に抗がんの治療に取り入れられているものです。

 この治療法ではまず動物の血液を採取し、血液から、体の免疫力を高めるリンパ球を取り出します。

このリンパ球を培養し、増殖させて点滴で体内に戻すことで、体の免疫力を高め、

がんの進行を遅らせたり、再発を防ぐことができます。

また、再発の可能性をより低くする方法として、

リンパ球に含まれる特定の細胞を使って動物自身のがんに合わせたワクチンを作ることが可能です。

このワクチンをリンパ球とともに投与することで、がんの患部に特化して免疫力を高めることができます。

 このほか免疫細胞療法は、免疫力を高めることによって風邪など様々なウイルス対策や

アンチエイジングなどにも効果があるとされています。

この日治療を受けたのは、左後ろ足にがんを患った14歳の犬でした。

 これまで体の3か所にがんを発症し、その都度手術によって腫瘍を摘出してきましたが、

今回足に見つかったがんは、腫瘍の全部分を摘出すると足を失わなければならない状況でした。

その一方で、放っておけばがんは広がるばかり。

命の危機にさらされることになります。

そんな中、がんの進行を遅らせ、再発を防ぐ再生医療ができたことで、新たな選択肢が生まれました。

 今回は、足を残せる限度となるおよそ7割のがんを取り除き、

残り3割のがんに対して再生医療を用いた抗がん治療を実施。

命と足の両方を残す治療を施すことができました。

 がんの進行状況などについてはこれから観察していくことになっていますが、

今回ワクチンを打ったことで、足やそれ以外の部分でもがんの発症を防ぐ一助となることが期待されます。 

一方「脂肪幹細胞療法」は、動物自身の細胞を用いて、体のさまざまな器官の再生を行う治療です。

 この治療ではまず、動物の皮下脂肪を0・5グラムほど採取し、

その中から「幹細胞」と呼ばれる細胞を取り出します。

 「幹細胞」とは、骨や血管、それに筋肉など、様々な器官や臓器に分化する働きを持っている細胞です。

この細胞を培養して増やし、動物の血液に投与したり患部に移植することで、

失われた臓器やけがの再生治療を行うことができます。

 この日処置を受けたのは、腰にある脊髄神経を損傷した犬です。

脊髄損傷によって後ろ足が思うように動かず、外科手術を受けましたが、

不自由なく歩けるようになるかどうかは経過次第という状況でした。

 そんな中、今後、後ろ足を自由に動かせる可能性を広げようと再生医療が施されることになりました。

 この日が幹細胞を入れる2度目の点滴です。

 今後は、体内に戻した幹細胞が損傷した脊髄の再形成を補助し、

歩けるようになる可能性が期待されます。