小諸市氷区にある天然の冷蔵庫「風穴」。

この風穴が生み出す特殊な環境を

植物学の観点からひも解くために。

専門家による講演会とパネルディスカッションが、

11日(日)安藤百福センターで開かれました。

 

 

「植物講演会」として開かれたこの日の催しは、

氷区の区民らを中心につくる、「氷風穴の里保存会」と、

風穴の保存と活用に向けて、

氷区の保存会と共に取り組んできた

「長野県建築士会佐久支部」、

2つの団体による

「信州小諸氷風穴を考える会」が企画したものです。

天然の冷蔵庫と言われる風穴ですが、

その近くには、真冬でも15.6度という

温かい空気が観測される「温風穴」があります。

まだ活用例はありませんが、

現在、梅の鉢や木の枝を入れて、

その活用を保存会で検討しています。

 

また、風穴周辺には、

氷河期からの生き残り植物、

ハヤザキヒョウタンボクが90所以上生息していることも

明らかになっています。

更に、絶滅のおそれがあるとして、

長野県のレッドリストに載っている希少な植物も

数多く発見されています。

そうした特殊な環境を、

植物学の観点からひも解こうと開かれたこの日の講演会。

 

専門家らの講演に続いては、

「貴重な植物を保存するためにできること」と題して、

植物の専門家2人と地元の区民2人の、

4人のパネラーによる

パネルディスカッションが行われました。

コーディネーターを務めたのは、

長野県建築士会佐久支部の荒木貴志さんです。

荒木さんに植物の保存のためにできることを聞かれると、

パネラーを務めた氷区の土屋清区長は、

保存会としての考えをこう述べました。

 

土屋さん

「風穴なら風穴に適した植物がある。

風穴と植物見比べて環境の変化を見る。

見て勉強して風穴も植物もそうしなければ、

環境をがらっと変えることのないように心がけて、

今までのように見守りながら勉強してやっていきたい。」

 

また、氷風穴周辺を観光化することについての

意見を問われると、

保存会員の前田和子さんは、

区民としての思いを述べました。

 

前田さん

「私のように嫁に来た者としては、この場所の素晴らしさ、

値打ちをもう少し観光につなげてもと思うがなるべく変えないでという思いもある。

月に何回か、春のシーズンなどご案内いただくのはいいのかなと思う。」

 

 

前田さんは更に、

「市内の小学生にも見学に来てもらい、

こういう素晴らしいところがあるということを

広めていってほしいと思う。」と話していました。

 

 

また、氷区の今後の課題として植物の専門家らはー

 

柴平さん

「風穴に自然環境を付け加えて伝えていただきたい。

その分、地元の人にもわかっていただければ。

子どもたちも含めて氷だけでもいいから歩いてみることも大事。

市で一番目立って光っているのが氷区。

だけど、所帯数は下から2番目。

それなのにこれだけ光っている。もっと光を放てるようなことができたら。」

 

指村さん

「詳細の情報を持っている人がいるので、

MAPに整理し、共有することからはじめたらいい。

整理して行く中で、こんなに珍しいものが自分の家の近くにあると感慨深く思え、

みんなの協力が得られる。」

 

コーディネーターを務めた荒木さんは最後に、

「地道な活動で次の世代につなぐ必要がある。」などと

述べていました。

 

荒木さん

「保存のテーマに基づいていくのであれば、

植物を知ってもらう、見てもらう。

お金をかけずにとにかく地道に活動して行く。

時間はかかると思うが、

次の世代につなぐ必要性が今あるということが今後のテーマになっていく」

 

「風穴の貴重な植物を大切にし、

伝えていくために何をしたらよいか。」

専門家と地元の人たちが意見を交わすことで、

今後の方向性を皆で確認する機会となったようです。